23区の真ん中、古い石塀をくぐると、まるでワープしたように不思議な世界に繋がっていた。

かつての陶芸家の収蔵品を保管、展示する博物館の隣、長屋のようなアパートの一室で一面古い磨りガラスに囲まれる宮本さんの部屋は木々の緑に染まり優しい風が吹き抜ける。

昨年、宮本さんの引っ越し中にのぞいた時は、中西さんが風呂場のタイルをはがし、新しい湯船を入れようという頃だった。

宮本さんの暮らしは、ただ古い家屋をモダンにして暮らしているのとは少し違う。

これまで暮らして来た住人の歴史、建物の歴史、心地よい風と共に蚊の大群をもたらす木々、冬の寒さなどと、自身のこだわりを同居させている。

野球好きだったという先の住人が残した野茂の切り抜きをなぞりながら

「おもしろいよね」とそのままのこしている。

 

季節と共に、歴史と共に暮らすことは、人間にとって好都合な事ばかりではない。

私自身、網戸も、冷房も無く、冬はストーブも効かないという宮本さんの部屋で暮らす事は難しいかもしれない。だからこそ、彼等の暮らしに惹かれるのだと思う。